JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

社員旅行費用の会計処理

国税庁ホームページ吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


食事代と交際費の関係について
10月半ばに採り上げてから
随分スパンが開いてしまいましたが、
交際費に絡む経理処理関連の
エントリ第2弾として、
社員旅行の費用について書いてみます。


社員の意識変化や昨今の厳しい経済状況から、
社員旅行という行事そのものを
やらなくなってしまっている会社もあるでしょうが、
それはそれとして一度お読みいただければ幸いです。


まず基本的な考え方として、
社員のレクリエーションとしての社員旅行は
その社員に対する現物支給の給与と考えられる、
ということを認識しておいてください。


その上で、一定の条件を満たすものについては、
給与としてではなく、福利厚生費などの科目で
損金処理をすることが認められています。


国税庁HPでも公開されているその条件は、以下の通り。


1)その旅行によって従業員に供与する
  経済的利益の額が少額の現物給与は
  強いて課税しないという少額不追及の趣旨を
  逸脱しないものであると認められること。


2)旅行の期間が4泊5日以内であること。
  海外旅行の場合には、
  外国での滞在日数が4泊5日以内であること。


3)旅行に参加した人数が
  全体の人数の50%以上であること。
  工場や支店ごとに行う旅行は、
  それぞれの職場ごとの人数の
  50%以上が参加すること。


この内、2と3は数値で明確に示されているので
誤解のする余地も無いと思いますけれども、
1については「少額」というのがどれくらいなのか、
良く分からないと思われることでしょう。


これについては「10万円前後」という判例があるので、
会社負担分を10万円以内に抑えておくことで、
その費用が給与と判定されることを避けられるでしょう。


この場合の本人負担と会社負担の割合については、
会社から供与される利益の額が問題なのであって、
その判断根拠が少額支給の不追求に求められることから、
会社の負担割合がどれくらいであったとしても、
特に所得税法でそこが問われているわけでありません。


あくまで会社負担が幾らなのか、ということです。


もちろん、10万円以内だからといって、
例えば高級ホテルの高額な部屋に宿泊するなど、
過度に豪華な旅行の場合には、
やはり社員への現物給与であると
判定される恐れがありますので、ご注意を。



また、それはそうだろうと納得していただけるでしょうが、
A)役員だけで行う旅行
B)取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
C)実質的に私的旅行と認められる旅行
D)金銭との選択が可能な旅行

については社員へのレクリエーションとは認められず、
税法上、現物給与や交際費として扱われます。


具体的にはAが役員賞与でBが接待交際費、
CとDが役員賞与または従業員給与・賞与、
という判定をされることになると思われます。



なお、社員旅行への不参加者がいた場合ですが、
その他の人が旅行で受ける利益の代償として
金銭の支給が行おうとする場合も、
以下のように扱われることになるので要注意です。


a)業務上の必要性による不参加者への支給は、
  その支払らわれた金銭の額が
  その者に対する給与等とみなされます。


b)自己都合による不参加者への支給は、
  不参加者のみならず参加者全員についても、
  その不参加者に支給した金銭と同額が
  給与等として支給された
とみなされます。


これはあくまでも会社からの支給に関する話で、
例えば不参加者に対して給与から天引きしていた
旅行積立金を返金するようなケースについては、
「預り金」を返金しただけのことであり、
給与云々という話にはなりません。



福利厚生費として認められるのは
あくまでも社員に対する慰労費用のみだというのも、
忘れてはいけないことです。


つまり、小規模でアットホームな
経営をしている会社に良くあるような
社員の家族が同行したような旅行の場合、
その家族分について会社が負担した部分は
幾らであろうとも現物支給の給与等となるのです。


同様に、ごく近しい取引先から
旅行への参加者がいた場合で、
会社がその人の旅行費を負担した場合には、
その負担額は接待交際費になります。


色々な面倒のもとにもなりかねないので、
こういうことを避ける為にも、
社外の人が旅行に同行する際には
実費で旅行費の全額を支払ってもらうことを、
私としてはお勧めします。


旅行代理店への支払は一括で行うにしても、
家族分や取引先分については
その全額を本人負担として受取、
きちんと領収証を発行しておくべきでしょう。



最後に、旅行先でゴルフをした場合の取り扱いについて。


例え社員全員が参加しているとしても、
ゴルフツアーは社会通念上一般的なものとは
認めらていない
というのが現状で、
つまりそれにつき会社負担分があった場合には、
その全額が給与等として取り扱われることになります。


なんでゴルフだけがこういう扱いになるのかと
少々疑問に感じられるかもしれませんけれども、
事例もある話ですので、お気をつけ下さい。