JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

土地の評価について(2)          ~地目による区分と評価方法の基礎~

個人の所有する財産を子供や孫などに移していこうと考える場合に、相続税贈与税がどうなるのかが気になっている人は多いことでしょう。
そのような財産の中でも、特に、土地については、かなりの注意が必要となってきます。


というのも、相続や贈与などの無償による土地の移動があった場合には、その土地をタダで受け取ることとなった者が、その土地の時価の分だけ利益を得ると考えられ、その利益すなわちその土地の時価に対して課税されることになりますが、現預金や上場株式等とは異なり、「土地」に関してはその時価が簡単に調べられないもの、自ら計算して求めなければならないものが多いからです。

 

前回の第1回では、公的に用いられる主要な土地の評価方法5種類の説明と、「財産評価基本通達」における土地の評価が地目ごとに行われること、そして地目の区分の概要をご説明しました。
今回の第2回では、地目の区分の補足説明と、具体的な評価額の算定方法の導入的説明を書かせていただきます。

 

<1> 23種類の地目と9種類の地目

 

第1回でご説明したように、「財産評価基本通達」において土地は、「宅地」、「田」、「畑」、「山林」、「原野」、「牧場」、「池沼」、「鉱泉地」及び「雑種地」の9つの地目に区分されています。

 

一方で、地目の区分方法として「財産評価基本通達」が準じている「不動産登記事務取扱手続準則」においては、地目の種類はその2倍以上、「田」、「畑」「宅地」、「学校用地」、「鉄道用地」、「塩田」、「鉱泉地」、「池沼」、「山林」、「牧場」、「原野」、「墓地」、「境内地」、「運河用地」、「水道用地」、「用悪水路」、「ため池」、「堤」、「井溝」、「保安林」、「公衆用道路」、「公園」及び「雑種地」の23種類となっています。


この違いはどこから来るのでしょうか。

 

「不動産登記事務取扱手続準則」にはあって、「財産評価基本通達」には無いものをリストアップしてみましょう。

 

まず「学校用地」。次に「鉄道用地」、そして「塩田」、「墓地」、「境内地」、「運河用地」、「水道用地」、「用悪水路」、「ため池」、「堤」、「井溝」、「保安林」、「公衆用道路」そして「公園」です。
なお、このうち「塩田」については、以前は「財産評価基本通達」に載っていましたが、現在は削除されています。


「財産評価基本通達」に含まれない地目をこうして眺めてみると、公用地や、公共性の高い土地といったものが並んでいることが分るでしょう。

それを踏まえたうえで、続いて、地方税法における固定資産税に関する規定を確認してみましょう。

 

<固定資産税に関する用語の意義>
固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 土地  田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。
地方税法第341条第二号)

 

この場合の「その他の土地」というのは、「雑種地」のことだと考えていただいてもいいでしょう。

 

そして、こちらはさすがに条文が長すぎるので引用は止めておきますが、固定資産税の非課税の範囲を限定列挙している地方税法第348条には、第2項第1号に「国や自治体が有する公用又は公共の用に供する固定資産」が、第2号の5~8に「鉄道用地」が、第3号に「境内地」、第4号に「墓地」が、第5号に「公共の用に供する道路」と「運河用地」や「水道用地」が、第6号に「用悪水路」と「ため池」、「堤」、「井溝」が、第7号に「保安林」が、第9号には「学校法人等が直接保育又は教育の用に供する固定資産」などが、掲げられています(なお、固定資産税が非課税であることは、その土地が相続税贈与税においても課税対象とならないということを意味するものではありません)。

 

固定資産税の課税にあたっては市区町村の役場がその土地の地目の現況を実地で調査して決定するのですが、当然ですけれども非課税となる地目については、これは行われません。
また、「塩田」については、現在では実地調査対象から削除され(H8.12.24 自治省告示第 289 号)現況調査は特に行われていないようです。

実際、地方税法には記載がありますが、総務省が公表している「固定資産税評価基準」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran13/pdf/tochi.pdf)では、「塩田」は削除されています)。

 

個々の地目ごとの評価方法の説明時に詳細はご紹介していきますが、相続税法の「財産評価基本通達」では、固定資産税評価額を利用する評価方法も定められており、その関係もあって、「財産評価基本通達」での地目の種類は、固定資産税に準じるものになっているようです。

 

<2> 地目の確認方法

 

土地の評価方法や評価額はその土地の地目によって異なると言われても、では、評価したいと思っている土地がどの地目になっているのかはどうやって確認したらいいのか分からない、という人もいらっしゃるかもしれません。


ただ、これは実は簡単で、地目というのは「不動産登記規則」で23種類に分類することが定められている、不動産登記法」に規定された登記事項ですから、要は、その土地の登記情報を確認すれば、地目が何かを確認できるのです。
つまり、お近くの法務局(又は法務局の出張所や証明書センター等)で土地の登記簿謄本を取得すれば、そこに地目が記載されています。

 

ただし、ここでご注意いただきたいのですが、土地の謄本は、その土地の地番が分からなければ取得できません
しばしば、住所だけを控えて法務局等へ行かれる人がいらっしゃるのですが、登記情報の確認(謄本の発行)に必要なのは住所ではなく、地番なので、お間違えのないようお願いします。


といって、住所と地番の違いを理解されている人も少ないかと思いますので、本論の本筋からは外れますが、ここで簡単にご説明しておきます。

 

まず、皆さんになじみが深いであろう住所

正式には「住居表示」ですが、これは郵便物を出す場合などに使われるものであり、各市区町村によって決定されます。

 

一方の地番は、一筆ごとの土地ごとに付されている番号であり、登記所が決定しています。「一筆」とは、土地の登記簿上の単位であり、土地の特定や、税金を課税する対象の特定にも使われます。
ですので、固定資産税を課税・徴収する為の土地台帳も、筆を単位として記載されています。

 

他に、土地の地目は法務局等で確認をする以外にも、毎年5月くらいに市区町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税の納税通知書」でも確認することができます

もし手元に「固定資産税・都市計画税の納税通知書」があるようでしたら、一度、そこに何が記載されているのかを丁寧に確認してみるのも、いいかもしれません。

 

なお、相続税贈与税の財産評価をするに当たっては登記上の地目で評価するのが原則ではあるのですが、仮に登記簿等の地目と実際の土地の利用状況が異なっていた場合には、相続開始日現在の、その土地の現況によって評価をすることとされています(「現況地目))。


例えば、賃貸マンション(「宅地」)とその付属する駐車場(「雑種地」)等、地目の異なる土地を一体として利用しているような場合には、主たる利用目的(この場合は賃貸マンション)の地目である「宅地」で評価を行うことになります。

童謡に、「宅地」については、一筆の土地であっても、2つの建物が建築されているなどにより、部分によってその土地の利用者や権利関係が異なってくるような時には、それぞれを区別して財産評価を行うこととされています。


また、2筆の土地であっても、そこに1棟の建物を建てているような場合には、それを1つの土地として財産評価を行います。
この財産評価の単位のことを、「画地」(かくち)と言います。

 

<3> 土地評価の2つの算出方法と評価単位

 

「財産評価基本通達」に定められている土地評価の算出方法は、大きく2つに分類されます。
すなわち、「倍率方式」「路線価方式」です。


これ以外に、その土地を「宅地」等とみなして評価額を算出し、その金額に一定の調整を加える「比準方式」という算出方法もあるのですが、これは、その方法を使う地目の評価方法の解説で、ご説明いたします。

 

また、「財産評価基本通達」は、「宅地」以外の8つの地目について、それぞれの地目を6つにグループ化し、財産評価の方法と単位を定めています。

 

1)「倍率方式」と「路線価方式」

まず、「倍率方式」について説明します。

「倍率方式」とは、その土地の所在地に応じて国税庁がそれぞれ定めている「評価倍率」を、その土地の「固定資産税評価額」に乗じることで、土地の評価額を求める方法です。
後ほど説明する「路線価」が設定されていない地域の土地の評価に使います。
「評価倍率」は国税庁ホームページにおいて「評価倍率表」として公表されており、簡単に確認することができます(https://www.rosenka.nta.go.jp/)。

 

参考までに、国税庁が公表している「評価倍率表」の読み方の画像を、下記に貼ります。

 

f:id:miyauchikaikei:20220104223258j:plain

国税庁HP(https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_rtof.htm)より引用

 

「倍率方式」による評価額の算出に必要となる「固定資産税評価額」の確認方法は、前回ご説明したとおりです。
土地の種類によっては「固定資産税評価額」に「評価倍率」を乗じた金額をさらに補正することもありますが、それは改めて、個別に説明します。

 

次に、「路線価方式」です。

「路線価」について国税庁ホームページでは、「路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位で表示しています。)のことであり、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。」と定義しています(https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm)。


「路線価方式」は「宅地」に用いられ、土地の形状などによる補正を加え、「路線価×各種補正率×土地面積」の算式で土地の評価額を算出します。
「路線価」も「評価倍率」同様、上記の国税庁ホームページで公表されており、誰でも確認することができます(https://www.rosenka.nta.go.jp/)。


なお、「宅地」であっても、「路線価」の設定されていない地域については「倍率方式」を用いて評価額を算出することになります。

 

2)「宅地」以外の土地の評価単位等

9つの地目のうち、「宅地」の評価については、「画地」単位で行うことを既にご説明しましたが、「宅地」以外の土地の場合は、どうなのでしょうか。
少し専門的な話になるので、読み流していただいても構いませんが、財産評価基本通達7-2を引用する形で、その点を簡単に説明します。

 

① 「田」及び「畑」:「農地」
「市街地周辺農地」、「市街地農地」及び「生産緑地」は利用の単位となる一団の「農地」を、それ以外の一般の「農地」は1枚の「農地」(耕作の単位となっている1区画の農地)を評価単位とします。

 

② 「山林」
「市街地山林」は利用の単位となっている一団の「山林」を、それ以外の一般の「山林」は1筆の「山林」を評価の単位とします。

 

③ 「原野」
「市街地原野」は利用の単位となっている一団の「原野」を、それ以外の一般の「原野」は1筆の「原野」を評価の単位とします。

 

④ 「牧場」及び「池沼」
「原野」に準じた方法で評価します。

 

⑤ 「鉱泉地」
 原則として、1筆の「鉱泉地」を評価単位とします。

 

⑥ 「雑種地」
市街化調整区域以外の都市計画区域の一部で特殊な取扱いがあることもありますが、原則として、利用の単位となっている一団の「雑種地」を評価単位とします。

 

前置きがすっかり長くなってしまいました。
以上で、2回に渡ってご説明してきた、土地の相続税贈与税評価の基本知識部分は終わりです。
次回以降は、それぞれの地目ごとに、具体的な評価方法をご説明いたします。