給与所得者の特定支出控除
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
ちょっと前の日本経済新聞で
記事になっていたとお客様から
質問の電話をいただいたので、
これもいい機会と考えて
このブログでも同じ内容を
採り上げてみたいと思います。
給与所得者、つまりいわゆるサラリーマンの人は、
大抵の場合において所得税の計算は会社が行う
年末調整処理によって全て完了し、
とりたてて自分自身が何らかの手続きを
行うということは無いかと思います。
医療費控除や住宅ローン控除の初回手続きで
確定申告を行う人もいらっしゃるでしょうけれど。
しかし、そういったことに縁のない人であっても
例えばスーツを買ったり、仕事に必要な本を買ったり、
業務上必要となる資格の取得費用だったりを
いわば「サラリーマンの必要経費」として、
その取得費の一部を所得から控除する制度がある、
と聴くと興味を覚えられるのではないでしょうか。
それが、今回のエントリのタイトルにもなっている
「給与所得者の特定支出控除」という制度です。
ただし、この規定の適用を受ける為には
法律で規定された一定の要件を満たす必要があり、
誰でも、何にでも、この控除を使えるわけではありません。
まず、その支出の内容が問われます。
具体的には、以下の6項目のいずれかに該当しなければ、
既定の対象である「特定支出」にはなりません。
1 一般の通勤者として通常必要な通勤費
2 転勤に伴う転居のために通常必要な転居費用
3 職務に直接必要な技術や知識を得る為の研修費
4 職務に直接必要な資格を取得する為の資格取得費
5 単身赴任の場合で勤務地等と自宅との往復の帰宅旅費
6 その他、次に掲げる支出(上限65万円)で、
職務上必要であるという給与支払者の証明があるもの
・職務に関連する図書購入費
・制服、事務服、作業服その他の勤務用衣服の購入費
・得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する
接待、供応、贈答その他の交際費の支出
この要件を満たした上で、これ等の支出の合計額が
次の区分に応じ、それぞれ掲げる金額を超える場合には、
その超える部分に相当する金額が控除対象額として
給与所得控除後の金額から差し引くことができるのです。
a. その年の給与等の収入が1,500万円以下
→その年の給与所得控除額×1/2
b. その年の給与等の収入が1,500万円超
→125万円
ここで、「給与所得控除額」が幾らになるのかは、
国税庁HPのこのページに計算式が出ています。
例えば年収が400万円の人の場合には
給与所得控除額は134万円になりますので、
前述の1〜6に該当する支出の合計額が
134万×1/2=67万円を超える時に
その超える金額を控除することができます。
こうして書き出してみると一目瞭然なのですが、
これ、普通のサラリーマンにとっては、
思ったほどに使えない規定であるように
感じられるのではないでしょうか。
これでも今年の1月から税法が改訂されていて、
特定支出の範囲が広げられた他、
支出合計額の条件も緩められているのですが。
とはいえ、この規定の適用対象者であれば、
確定申告をすることで源泉所得税の
還付を受けることができますので、
もしかしたら、と思われた方は一度
会計事務所や税務署に問い合わせなどを
してみるのもいいかもしれません。
なお、最初に書いたスーツは「衣服の購入費」に相当し、
一般的に給与と同時に通勤交通費として支給される金額は
(もともと所得税が非課税なので)ここで言うところの
「通勤費」には含まれないので、ご注意ください。