JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

期の途中で課税事業者かどうかを判定する?

吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


現在、政府税調の議題になっている検討項目には、
これはどうなるかなと、
大いに気になるものが幾つかあります。


このブログでもそれ等を取り上げていくつもりですが、
今回はその中から1つをピックアップしました。


先月16日に議題になったもので、消費税について、
「課税売上高が1,000万円を超えることが
 期の途中で明らかとなった場合には、
 その翌期から課税事業者とする」

というものがあります。


現行の消費税法の規定において、
その事業者が消費税の課税事業者になるかどうかを
どのように判定するのかは、
以前、消費税の仕組みについて説明したときに書いたように、
前々期の課税売上高(多少違う部分もありますが)によります。


つまり、現在進行中の課税期間における課税売上高が
最終的にいくらになったかが確定するのを待ち、
それが1,000万円を超えていたならば、
その次の課税期間は課税事業者になるという制度です。


ですが、今回の改正案が国会を通過した場合には、
課税期間が終了して課税売上高が最終確定するのを待たず、
期の途中において課税売上高が1,000万円を超えた時点で、
次の期が課税事業者になることが確定するということになります。


つまり、課税売上高1,000万円超の課税期間の
翌々期が課税事業者になるのではなく、
その1期前の翌期においてすぐに課税事業者になるわけです。


明らかに税収増を狙った改正案なわけですけれども、
実際の運用面でどういうことになるのかの疑問がいくつか浮かびます。


ちょっと列挙してみましょう。




1)「期の途中」とはいつまでを指すのか


ここで言う「期の途中」が具体的に何月何日までを指すのか。
当然ですが、その期間がどうなるかによって
この改正案が現実のものとなった場合の処理、
実務上の取り扱いは変わってくるでしょう。


期末ギリギリまでひっぱるのか、
上半期だけで判定するのか、
それとも、あるいは……




2)税務署側は1,000万円を超えたことをどう確認するのか


日本の税制は基本的に申告課税ですし、
その事業者の課税売上高について、
期の途中において1,000万円超がはっきりしたかどうかを、
事業者からの資料提供無しに
税務当局サイドがその時点で把握するのは
現実的に考えて不可能に近いでしょう。


現在、前年における消費税の確定税額が
一定額を超える事業者については、
前年実績を基にした中間申告・納付が義務付けられていますが、
任意選択で、その期における実際の取引額を使った
仮決算を行うことも認められています。


現行の前年実績による中間申告制度を廃止し、
4半期ごとに仮決算方式により中間申告をすることを
全ての事業者に対して義務化してしまえば、
期中における各事業者の課税売上高を把握することは
可能かもしれませんが、
事業者側の事務負担増加は必至です。


資本金1,000万円未満の新設法人にも影響がありますね。


私としてはちょっとそれはどうかなと思ってしまいますし、
本当にそのような方法を検討するのだとすれば、
各方面から強い反対があることが予想されます。




3)課税事業者になるのは翌期だけか


この改正案が現実になった場合には、
期の途中に課税売上高が1,000万円を超えることが分かった場合、
その事業者はその翌期に課税事業者になるわけです。


で、これは私見ではあるのですが、
その場合でも現行法における
「基準期間における課税売上高」を使った
消費税納税義務の有無の判定という規定は
有効なものとして生きるのではないでしょうか。


つまり、とある課税期間の途中で、
その期の課税売上高が1,000万円を超えた場合、
その翌期と翌々期の2期ともが課税事業者になることが
確定するということになるのではないかと考えています。


消費税の仕組み(その1)で書いたように
そもそも各々の消費者が負担すべき税金を事業者が預かり、
その代理としてそれ等をまとめて税務署に納付するというのが
消費税のシステムですから、
本来ならば全ての事業者が消費税の課税事業者となるのが
スジであると言えるのでしょう。


ですから、私の予想通りになったとしても、
この件に関しては、ちょっと理路整然とした反論は
しにくいように思えます。








……と、まあ、私がちょっと考えただけでも、
これだけの疑問点が出てくるわけです。


これ等について、政府税調がどう結論を出してくるのか、
そもそもこの改正を実行に移そうとするのか否かも含め、
相変わらず、来年度税法改正の動きからは目が離せません。