JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

減価償却とは(その1)

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吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


来年度の税制改正の項目に挙がったところでもあるので、
今回から数回を使って「減価償却」という会計処理について
簡単に説明してみたいと思います。


個人であれ法人であれ、事業を営んでいく為には
ある程度の設備や備品が必要となるもの。
その購入費用は当然、経費となりますが、
ただし、支払いを行った日の属する課税期間において
その支払額の全額をそのまま収入から
差し引けるわけではありません。


設備や備品といった有形固定資産については
減価償却」という処理を行うことで、
取得日の属する課税期間から一定の年数をかけて
段階的に費用化していくことになります。


それが具体的にどういうことなのかを説明するには、
まず最初に企業が行う財務会計の目的を
確認しなければなりません。




端的に言って財務会計は、
株主や投資家、債権者といった外部の利害関係者に向けて、
彼らが投資などを行うにあたって適切な判断ができるよう、
その意思決定に役立たせる為の情報開示をするということを
主要な目的としています。


そういった外部の利害関係者にすれば、
ある事業者に対する出資や貸付により投下された資金が、
その事業者の経営活動の中でどのように使われ、
その結果、状況がどのようになっているのか、
それを知りたいと思うのは当然のことでしょう。


その事業の経営成績、どれくらいの利益が出ているのかにつき、
本当に正確に全てを把握しようと思ったら
開業から廃業までの売上と原価、経費などを
トータルで計算する必要があります。


ですが、その事業に対して投資しようかどうかの意思決定、
または自分が行った投資の成果を確認する為の資料に使うには、
それでは時間がかかりすぎます。


そもそも、順調に経営が行われている事業であれば、
廃業などしないでしょうし、
利害関係者側も場合によっては追加で資金投下をして、
経営サイドに事業を継続し、更なる利益を上げてほしいはず。


この問題について、会計の規則では、
ある程度の年月(基本的には1年)をスパンとして
計算期間の区切りを設けることで対応しています。


そして利害関係者らは、
その期間内の経営がどうであったかを示す資料を
事業者側から提示され、それを見ることで、
その事業に対する投資継続の可否を判断することになります。


具体的にどういう書類が作成されるのかというと、それが、
一定期間における経営成績を示す「損益計算書(P/L)」と、
一時点における財政状態を示す「貸借対照表(B/S)」という、
2種類の書類から主になっている財務諸表です。


やや極論なのは承知の上で敢えて言えば、
財務会計の目的はこの財務諸表を作ることにあるのです。




さて、今回の主題である「減価償却費」ですが、
この勘定科目が掲載されるのは財務諸表の内、
その期間に生じた収益と費用が記載される「P/L」になります。


上記の通り「P/L」は「一定期間における経営成績」を示す書類です。


つまり、その期間に生じた収益から、
その収益に対応する費用を差し引いて、
例えば平成22年の1年間においてその事業が稼ぎ出した
利益の額を計算する為の書類だと言い換えてもいいでしょう。


この、「収益とそれに対応する費用」というところが、
今回のエントリで私が書きたいことの一番のポイントになります。


その事業者の経営活動の成果、つまり、
いくらで仕入れた物をいくらで販売してどれだけの利益を得たかを
きちんと把握しようと思うのであれば、
売上と仕入れや経費は、
ひも付きで繋がっていなければならないですよね。


そうでなければ、
仕入れのないまま商品の売上ばかり計上されて利益が過大になったり、
逆に、未販売商品の仕入れが計上されて利益が過少になったりして、
きちんとした業績、経営成績の把握などできません。


この、「その期間の収益とそれに関連する費用を対応させる」ことを、
会計の用語で「適正な期間損益計算」と言います。




今までの文章は外部の利害関係者側の視点に立って書いていますが、
経営者サイドにしてみても、今後の経営計画を考えるに当たって、
「適正な期間損益計算」が行なわれている「P/L」は、
大いに役立つ資料となるということも、お分かりいただけるでしょう。


つまり「適正な期間損益計算」というのは、
企業の経営を考える上で、非常に大事な考え方なのです。




今回のエントリの説明を前提として踏まえていただいた上で、
次回は「適正な期間損益計算」と「減価償却」の関係を
多少詳しく書いてみたいと思います。