JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

暗号資産(仮想通貨)と申告漏れ

Web担当です。

 

先日、知人と話をしていた時に、「そういえば」と
聞かれたのが、2017年にビットコイン
多額の含み益を手にした「億り人」の皆さんが
今は自己破産間際らしいねという話でした。

 

確かに当時、ビットコインの価格が一気に
200万円超えになったことで億円単位の
利益を獲得した人が何人も誕生しました。

 

ビットコイン相場は今年、緊急事態宣言当時に
一度大きくレートを落としたものの、その後、
下落前の120万円前後に値を戻しましたし、
おそらくアメリカ大統領選挙の混迷を反映して、
最近は180万円台~190万円台を推移して、
昨日は遂に3年ぶりに200万円台にも乗るなど、
そのレートはかなり上昇を見せています。

 

それが気になってそんな話題を出したのかな、
と思って聞いたら、私は知らなかったのですが、
以前に何かの雑誌の記事で「億り人」が
国税庁所得税の税金未納を指摘されて、
多額の本税と延滞・加算税に苦しんでいる
というようなことが書かれていたのですね。

 

最近のビットコインの相場状況を見ていたら、
それを思い出したのだと友人は言っていました。

 

なる程と思いつつ、意図的に脱税をしたなら
そういうニュアンスの記事にはしないだろうと、
少しばかりネットで検索して調べてみました。

 

どうやらニュースになった人は、低額時に購入して
保有していた仮想通貨が2017年に高騰した際、
他の仮想通貨への買い替えを行っていた、
その時の利益について申告しないままに
なっていたことを後から指摘されたようです。

 

どうやら、仮想通貨を日本円等の通貨に
換金しない限りは利益が確定しない、
というようなことを思っていた模様です。

 

租税法上の仮想通貨に関する所得計算は
2017年12月に「仮想通貨と所得計算」
というタイトルで書いたことがありますが、
そこでも説明させていただいたように、
これは残念ながら誤った認識になります。

 

皆さんが分かりやすいようにここまでは
一般的な「仮想通貨」という言葉を使
って説明してきましたけれども、
法律上では(全てが全てではありませんが)
「仮想通貨」ではなくて「暗号資産」という
名称で呼ぶということになっています。

 

あくまでも、「通貨」ではなくて「資産」なのです。

 

ですから「暗号資産」と「暗号資産」の買い替えは、
つまり資産と資産を物々交換することと
同義なのだと考えてもらわなければなりません。

 

そのように認識していただければ、元々の
資産の取得価額と新しい資産取得時の時価
比較して後者が大きければ、そこに差額分だけ
利益が生じることは理解しやすいでしょうか。

 

もともと自分が1万円で買った財産を、
10万円相当の物品と交換すれば、
9万円の利益が生じますよね。

 

要するに、そういうことです。

 

「暗号資産」で「暗号資産」を買うということは、
通貨を通貨に両替しているのではなくて、
資産の物々交換をしているのです
(例えば不動産の交換の際などについても、
同様の考え方に基づいた租税法上の
取扱いをするということになっています)。

 

これは、暗号資産(仮想通貨)を対価にして
何らかの物品を購入した時にも言えることです。

 

例えば10万円で購入した暗号資産で
30万円の品物を購入したような場合には、
差額の20万円だけ得をしているわけですから、
その利益に対して所得税が課税されます。

 

「含み益」には課税されないというのは、
それが損益が確定していない状態だから
税金も課さないということなのであって、
現金化されない取引であったとしても
取得価額との間の差額がはっきりすれば、
それは損益の確定をも意味するので
当然にそこに課税されることになります。

 

つまりその時点で「含み」では無く、
「実現された利益」になるのです。

 

記事に乗った人はその後、交換した先の
暗号資産(仮想通貨)の価格が下落して、
今やほとんど価値もなくなってしまっているので、
換金して税金を納付することもできないそう。

 

聞くだけでもかなり厳しい話ですけれど、
暗号資産(仮想通貨)が法定通貨ではなく
資産として法的に扱われている以上は
おかしなところの存在しない理屈であり、
文句は付けられないかなというところ。

 

記事に取り上げられた人のことは
本当にお気の毒だとは思うのですが、
法的なところではちょっとどうしようもない、
としか言いようがないのが残念です。

 

ここ最近のビットコイン相場の上昇で
利益を出している人は、同じようなことに
ならないよう、利益についてはしっかりと
来年の2月~3月に確定申告をして、
脱税にならないように気を付けてください。

 

無申告のまま放置すると、国税から指摘されて
本税だけでなく、場合によっては無申告の
重加算税までも課されるかもしれません。

 

それを、よく覚えておいてください。