タワーマンション節税について
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
今月の頭に、タワーマンションの
購入を使った相続税対策について
法改正が行われるのではないか、
というニュースを目にしました。
今回はそれについて簡単に説明したいと思います。
端的に言えば、これは土地に関する
評価額を算出する規定を
利用した節税策の1つになります。
今回は土地に関する財産評価基本通達の説明は
本題から外れるので割愛させていただきますが、
ひとまずは、その土地に面している道路に対し
設定されている「路線価」と土地の面積や計上を
用いて算出されるのだとご理解ください。
ですので下の図のように、同じ道路に面した
同じ形状と広さの土地であれば、
この2つの評価額は同一のものになります。
その上で、図のように土地が分譲マンションの
敷地になっているような場合には、
そこに住む人がそれぞれの専有面積比に応じて
個々の土地の評価額が決定します。
つまり、A,Bの土地の評価額が1,000万だとして、
Aのマンションだと1室あたりの敷地権は
その 1/10 の 100万円ということになり、
Bのマンションだと 1/5 の200万円となります。
相続税はこうして求められた評価額に対して
課せられるものですので、同じ地域に
建てられている建物であるならば
低層マンションよりも高層マンションの方が
税額が低くなるということが言えます。
この場合、敷地権の評価額はその部屋が
マンションの何階にあるのかに関わらず、
単純に専有面積の比で案分されるので
それが1階でも10階でも金額は変わりません。
しかし、実際の売買価格で考えるならば、
一般にマンションであれば周囲の建物の
影響を受けにくい高層階の方が、
眺望が良くて日当たりも良いなどの理由から
同じ間取りでも値段が高くなるものです。
ですので例えば30階建てマンションの
最上階に部屋を1つ有している場合などに、
時価が3億円程度なのに対して
相続税評価額は6,000万円程度、
などというような差額が非常に大きい事例も
そんなに珍しい話ではありません。
相続税対策としてこれを購入すれば、
現金等で所有している場合には
3億円に税金が課せられたのに比べ、
6,000万円に対する税金で済む。
これは課税の公平という考え方からも
明らかに適正とは言えないのではないか、
というのが、ここで問題視される内容です。
ちなみに、これを利用したスキームのうち
特に相続税の圧縮に特化したものとしては、
例えば、次のようなケースが考えられます。
① 資産家のA氏が末期癌で余命が
短いことが分かった為、3億円を支払って
上記のようなタワーマンション物件を購入。
② その後A氏が亡くなり、相続人のB氏が
マンションを相続して6,000万円の
課税価格に対応する相続税を納付する。
③ B氏がこのマンションを2億9千万で売却。
この場合も取得価額は当初購入額の3億円を
そのまま引き継ぐので差引1,000万円の
譲渡損失となって所得税は発生しない。
①〜③ の流れを読む限りではB氏は
かなりの節税に成功しているように見えますよね。
とはいえ、この事例を始め「租税回避」が目的と
判断できるようなケースについては、
路線価による評価が適切ではない特別な事情が
認められるケースとして納税者が敗れている
判例が既に幾つも確定してもいます。
さらに今後、そもそもタワーマンションの高層階などを
財産評価する際の基本通達そのものが
改正される可能性が高まってきたということで、
ということはつまり相続税の節税目的で
分譲タワーマンションを購入するというスキームは
むしろ利用を回避すべきものになってきたと言えるでしょう。