消費税のリバースチャージ方式 その2
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
少々間が空いてしまいましたが、
10月1日より施行されている
「国境を越えた役務の
提供に対する消費税の課税」
についての見直しにつき、
前回の続きを説明させていただきます。
前回は、この改定により実施されることになった
消費税等の「リバースチャージ方式」とはつまり
「消費税額逆算計上方式」というような意味であり、
Google AdWords 等の海外サーバーが提供する
サービスに対して請求された金額を税抜価格とみなし、
そこから逆算によって課税仕入とした場合の
消費税額を算出するというものであると書きました。
今回は海外業者に支払う金額を10万円とした
前回の事例を引き継いだ上で、
その具体的な仕訳例を書いてみます。
まず、実際に支払いが行われる10万円ですが、
これについては従来と同じように
(借方)広告宣伝費 100,000円
/(貸方)現金・普通預金 100,000円
という仕訳を切っていただけば大丈夫です。
では、逆算される消費税等8,000円については
どのような仕訳を切ればいいのでしょうか。
こちらは個別通達により任意とされているので
必ずしも計上しなければならないものではありませんが、
仕訳を切るとしたら、次のようになるでしょう。
借方が「仮払消費税等」になるというのは
すぐに考え付かれるだろうと思いますが、
それに対応する貸方にはどのような
勘定科目を当てはめればいいか。
先程と同様に書き出してみると、こうです。
(借方)仮払消費税等 8,000円
/(貸方) ? 8,000円
この取引においては10万円の広告宣伝費意外には
現預金の動きもありませんし費用の減少や収益も無い。
しかし複式簿記では貸借が一致することが大前提なので、
借方に8,000円という金額の記載がある以上は
貸方にもそれと同じ金額を計上しなければなりません。
ここで思い出していただきたいのが、
この制度化においては支払額から
逆算で算出した消費税等の額は事業者が
一時的に預かった形になるということ。
ですので、実際に切られる仕訳はこういうものになります。
(借方)仮払消費税等 8,000円
/(貸方)仮受消費税等 8,000円
仮払と仮受の双方に同額が計上されますので、
この仕訳からは消費税等の納付税額は
(ひとまずは、ですが)発生しません。
実際の処理としては、当事務所の推奨している
株式会社TKC製の会計ソフトがそうであるように、
取引の都度にこの仕訳を計上するというよりは、
期中に行われた該当取引の金額を別途管理し、
決算時にその合計額から上記の仕訳を
計上するというような形になると思います。
消費税の申告書上はリバースチャージに係る
取引については「特定課税仕入れ」として
通常の課税仕入れとは別行に表示され、
仕訳の貸方である「仮受消費税等」については
この「特定課税仕入れ」と同額(この事例では10万円)の
売上があったものと同じとみなす形で、
消費税の課税標準に別途加算することになります。
当然ですが、これは消費税の税額計算の話なので
そもそも納付義務の生じない個人消費者や
免税事業者には始めから関係が無い話です。
また、課税仕入れに係る消費税等の内、
課税売上割合を利用して算出される一定の金額しか
売上に係る消費税等から控除できない
「個別対応方式」や「一括比例配分方式」と違い、
仕入れに係る消費税等の全額を
売上に関する消費税等から差し引ける
「全額控除」の適用を受ける課税売上高5億円以下
かつ課税売上割合95%以上の事業者については、
「仮受消費税等」と「仮払消費税」が同額なことから、
「リバースチャージ方式」による申告をしてもしなくても
納付すべき税額が変わらないことになります。
そして、「簡易課税制度」の適用を受る事業者は
税額計算に際し課税売上の金額しか使わないことから、
そもそも「特定課税仕入れ」を認識する意味がありません。
このことから、「リバースチャージ方式」については
その適用について以下のように定められています。
・ 免税事業者と関課税制度適用事業者は対象外
・ 課税売上割合95%以上の事業者は当面は適用除外
その事業年度の課税売上高が5億円超で
「全額控除」の適用が受けられない事業者でも、
課税売上割合が95%以上であれば
適用除外となるのでご注意ください。
最後に、「リバースチャージ方式」について書かれた
国税庁ホームページにて公開されているリーフレットの
pdf ファイルへのリンクを貼っておきます。
「国境を越えた役務の提供に係る 消費税の
課税の見直し等について(国内事業者の皆さまへ)」
当事務所の関与先様は不明点などありましたら、
各監査担当に遠慮なくご質問ください。