消費税のリバースチャージ方式 その1
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
「国境を越えた役務の
提供に対する消費税の課税」
について抜本的な見直しが
行われてから1ヶ月が経過しました。
これは、インターネット等の電気通信回線を介して
行われる各種役務の提供に関する消費税の取り扱いを、
国内事業者と海外事業者との間で生じていた
課税の不公平が是正されるような形で変更したもので、
具体的には海外サーバーからの電子書籍、音楽、
広告等の、いわゆるデジタルコンテンツの配信や
ゲームやアプリといったもののダウンロード、
クラウドサービスの利用等が対象となります。
これはかなり大きな改正であるにも関わらず
これまでこのブログで紹介していませんでしたので、
遅まきながらまずは今回のエントリーを使って
その概要を説明させていただきたいと思います。
消費税とは国内で行われた消費活動に対して
課せられる税金であるわけですけれども、
今年9月までの規定ではこういった取引が
国内で行われたものかそうではないかにつき、
「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」
がどこであるかを、その判定基準としていました。
Yahoo や Google といった検索エンジンの
検索結果画面に自社の広告を掲載してもらうサービスを
申し込んでいる場合には、その支出は当然、
「広告宣伝費」として経費計上されることになります。
この時、従来の判定では Yahooリスティング は
役務の提供をしているサーバーが国内にある為に
消費税の課税対象となって支払額に消費税が課せられますが、
一方の Google はサーバーが海外にあるということで
AdWords のサービスは国外サービスになり
消費税の課税対象外となっていました。
広告宣伝というのは媒体によって得られる効果が違う以上、
これだけを以って有利不利の話をしてしまうのは早計ですが、
少なくとも消費税の負担の有無で言うならば、
Google の方が Yahoo よりもお得です。
どちらも基本的に同じサービスであり受け手が同一である以上、
これは課税の公平や国内産業の保護育成という観点から
明らかに問題がある状態だったと言えるでしょう。
ここを是正する為、消費税法の改正により、
役務の提供に関する内外判定を行う際の基準が
前述した従来のものから「役務の提供を受ける者の住所等」に
変更になったのが2015年10月1日でした。
Yahooリスティング も Google AdWords も
国内の事業者がそのサービスを利用している場合には、
改正後の基準による判定で国内取引となって
どちらも課税仕入れとして取り扱うことになる、
つまり、仕入れ税額控除の対象となることになりました。
では、Google からの実際の請求額や支払額が、
これまでのものに消費税8%を上乗せされた
「税込」金額に今後は切り替わっていくのでしょうか。
例えば、 Google AdWords に対して
毎月10万円の支払いをしていたようなケースにおいて、
10月以降は請求額に消費税が上乗せされて
10万8千円に変わっていたりするのでしょうか。
実は、そのようなことはありません。
役務の提供者たる国外事業者の側については、
日本の税務署に対して提供したサービス分だけの
消費税の申告と納税をしてもらえばいいわけですが、
役務の提供を受けた側で同額が控除されなければ
それは消費税の2重課税ということになってしまいます。
そこで導入されたのが「リバースチャージ方式」という
消費税等の仕入税額控除の計算方法です。
そう言われてもそれがどういう内容なのか、
どういう方法なのかが英語表記では
良く分からないと思われるかもしれません。
直訳、適語訳ではありませんけれども、
この場合の「リバース」は「逆算」のことを
「チャージ」は「課税」のことを指しているので、
これを日本語に訳すとするならば、
「消費税額逆算計上方式」とでもなるでしょうか。
つまり、前述の例を使うならば Google AdWords に
支払われる110円を税抜き価格とみなして、
そこから逆算して消費税額の8千円を算出するのです。
ただし、この方式の適用を受けても Google AdWords に
支払うのが税抜の10万のみというのは変わりません。
では、算出された8千円の消費税はどうするのか。
実は、これについては給料の源泉所得税のように
サービスの受け手側がそれを一時的に預かる
という処理をすることになっています。
ここまで書いた内容を読んでいただいた方は
預かった以上は国に納付しなければならないはずだから、
結果的に、10万円しか支払わなくて良かったものが
10万8千円の負担をしなければいけなくなることと
何ら変わらないのではないかと思われることでしょう。
実際には預かった消費税等と同じだけの
控除税額も発生することになるのですが、
既に今回のエントリーもかなり長くなっているので
この辺りは近日、仕訳例を挙げながら
改めて説明させていただきます。