JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

建物の購入に係わる消費税のスキーム封じ その2

Web担当です。

 

今回は前回のエントリーに
引き続いて建物の購入に係わる
支払消費税の取り扱いに関する
改正の話をさせていただきます。

 

課税売上割合が低くなってしまう為に
仕入税額の全額控除が適用されず、
建物購入の消費税が控除できない。

 

ならば、購入日の属する事業年度において
消費税の非課税売上が発生していなければ
いいという考えから、何らかの課税売上を
計上した事業年度に建物を購入し、
実際に賃貸するのは翌事業年度にする
というスキームが昔から存在しました。

 

こうすれば課税売上割合は100%になるので、
建物の購入に係わる消費税は控除対象となり
還付を受けることが可能になるという仕組みです。

 

これを封じるべく課税当局側は特定の課税資産を
購入した翌年以降3年間の通算で計算した
課税売上割合が大きく変動している場合には
購入時に控除した仕入税額のうち一定の金額を
その事業年度の消費税納付額の計算にあたって
加算する(実際の取り扱いはもっと複雑ですが、
とりあえずはこの認識でいいと思います)という
調整を行うという改正を実施しました。

 

それに対し納税者側は年間の課税売上割合が
著しく減少してしまうということがないように、
毎年、上記の調整の要件を満たさないための
課税売上を作るという方法で対応しました。

 

そこで使われたのが、単価が高く市場が存在し、
かつ価値が安定している金の地金の売買です。

 

金の売却によって一定額の課税売上高を
作り出すことによって、課税売上割合が
建物を購入した事業年度と比べた時に
著しく減少していることが無いようにする。

 

これが、このスキームの目的です。

 

この行為に対し課税当局側は今回の改正で
「出口で取り締まれないのであれば入り口で」
ということなのか、住宅の貸付の用に供さない
ことが明らかでない建物以外の建物であって
高額特定資産に該当するものについては、
そもそも最初から仕入税額控除の対象に
しないということを打ち出してきたのです。

 

これにより、上記の金地金売買を使った
スキームは完全に封じられたと言えます。

 

なお、これに該当する建物であっても
購入の日の属する事業年度を含む
3年以内に居住以外の用に供すれば、
それに対応する部分の消費税については
改めて仕入税額控除に加算できるようです。

 

これに、実際に消費税を支払っているのに
その控除を認めないというのは問題だ、
という意見もあるかとは思いますけれども、
そもそも消費税は、最終消費者が負担する
税を事業者側が預かって納付する構造であり、
それを考えれば、こういう扱いになっていくのも
あながち取扱いとして間違っているとまでは
言えないのかなとも私は感じています。

 

あくまで個人的な見解としては、ですけれど。

 


なお、金地金と消費税ということでいえば、
密輸により国内に持ち込んだ金の地金を
国内の下取り業者に販売したうえで、
それを再度海外に(今度は正式に)
輸出することで、国内での売却時に
受け取った消費税相当額を詐取する
違法取引も以前から問題になっています。

 

これはこれで、説明を始めると長くなるので
いずれ別の時に機会があればということで
今回は触れずにおくことにしますけれども、
興味のある方は、ちょっとご自分で調べて
みるというのも面白いかもしれません。