「廃業準備貸付け」
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
年齢上の問題または業績悪化等の原因により
個人事業を廃止し、あるいは法人を解散しようと
思っていらっしゃる人も増えてきているのでしょうか。
しかし、事業の廃止も法人の解散もどちらも、
思っただけで実行できる簡単な話ではありません。
取引先との関係だったり、銀行からの借入だったり、
従業員への退職金準備だったりと、
色々と考えていかなければならないこと、
資金的な負担も多くて踏み切れないということも。
中小企業の資金難という実情を見れば、
法人を解散させたくとも解散させられないまま
仕事自体は実質的にやめることになってしまって、
営業の実態の無い、いわゆる「幽霊法人」だけが
際限なく増えていくことも考えられます。
それは、国としても好ましくないと考えているのでしょう。
法務局が行う「休眠会社・休眠一般法人の整理事業」
というものも平成27年度に計画されていますけれど、
できるのであれば自らが解散手続きを取ってほしい
というのが国としての本音であろうと思います。
それを受けてか、今月の1日から中小機構こと
独立行政法人中小企業基盤整備機構が
「廃業準備貸付け」という制度をスタートさせます。
「買掛金や借入金の返済」「設備の処分資金」
「従業員への退職金の支給」を目的として、
50万円から1,000万円の範囲の資金を
年利0.9%で貸し付けるというもの。
ただしこれは同機構が中小事業者に対し、
その退職金に相当するものの準備として設けた
小規模企業共済制度に加入していることが前提で、
その掛金の納付済み額として一定の範囲でのみ
行われると規定されていることには留意すべきです。
つまり生命保険契約でいうところの
契約者貸付金制度に近いものであり、
廃業後に共済金から一括返済されるのも
契約者貸付に似ていると言えます。
であれば、これは経営者の個人資金を
投入して会社の解散をするということであり、
言ってみれば役員借入金のようなもので、
借入自体も掛金の枠内で最大1,000万と
そこまで大きな金額ではありません。
何となくですが、これを有効に使い廃業できる
事業者はあまり多くはないように思えます。
制度の実効性がどれくらいになるかは、
もちろん、これから利用例が増えてみなければ
分からないところではあるのですが……