JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

事業承継税制の概要とH23年度改正(その3)

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吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


「事業承継税制」に関して簡単に説明してきたエントリも、
今回が最終の第3回目、
この制度の適用を受けようとする場合の要件で
使い勝手が悪くて仕方が無い部分を説明します。


前回書いたように、この制度は経営の円滑な引き継ぎと
会社の安定的な継続を達成する為に、
基本的にはかなり有効な手段となり得るものです。



まず、私が最大の問題点だと思っているのが、
従業員がいることを証明する方法。


政策として中小企業における雇用の維持を図るのは、
これは政府としては当然やるべきことですので、
「事業承継制度」の適用を受ける為に
従業員を雇用している実態が必要とされることと、
その一定の維持をしていなければ
制度の適用が取り消されることには、私も異論はありません。


この、雇用事実の証明方法につき必要な書類は
一部の特別な場合を除き原則として
社会保険料の標準報酬決定通知書等であるとされています。


会社として社会保険に加入した際の、
保険料の会社負担分は
どうしても結構な金額になりがちです。


現在の経営状況ではそれに耐えるのは厳しく、
場合によっては社会保険に加入したが故に
倒産してしまうというような事態も想定できるだけに、
本来は加入義務があるのは分かっていながらも
未加入のままでいる会社は多いのではないでしょうか。


そういう会社は、この決定通知を提出することができません。


が、要は雇用の事実が証明できればいいわけですし、
規定にも「等」と書かれているのですから、
ここは雇用保険の加入者証で代用できるのではないか。


以前に某社で適用を検討した際にそう考えて、
この制度を使う為の第一段階である
適用事業者の承認を行う経済産業省の担当部署に、
雇用の証明について問い合わせをしてみたことがあります。


そこで得られた返答は、しかし、
雇用の証明は標準報酬月額決定通知でなければ
受付できないというものでした。


ならば始めから条文に「等」とは
書かないでほしいという話です。


まあ、経産省の発表している手引きなどを読むと、
「等」となる理由については
理解ができなくもないのですけれども、
とはいえ、素直に納得はできません。


義務を果たしていなければ
権利を主張もできないということでしょうけれど、
事実上、社会保険加入が必須条件なので、
その時も結局、この制度の適用については
選択肢から外すことになりました。



また、その会社の代表者と特別な関係にある者が
風俗営業会社の議決権の
過半数を持っていないことという規定も、
大きな問題だという声が大きかった点です。


ここで言う「特別な関係にある者」は民法に規定する親族、
つまり「6親等内の血族および3親等内の姻族」
であると従来はされていました。
(具体的な図表はWikipedia等で確認できます)


これで規定される範囲はかなり広く、
普段全く接触が無いような親戚も多いことでしょう。


そのような人がどういった会社の株を持っているかを
いちいち全て確認するのは大変な手間ですし、
そもそも本人に聞いたとして答えてくれるのか、
そんな個人的な情報を教えてくれるのか疑問です。


ただここについては平成23年度の税制改正
この親族の範囲を「生計を一にする親族」とするという
読み替え規定が置かれることになりました。


これならば、上記の確認作業も楽に行えますし、
制度の適用を受けるのが容易になったと言えるでしょう。


良い改正だと思います。



とはいえ雇用証明については未だ従来のままで、
やはりこの「事業承継税制」は
まだまだ使い勝手が悪いと言わざるを得ません。


その理念には賛同できますし、
効果も大きいと思うのですけれども、
実際の適用を検討するには制約が大きすぎる、
現状、これは、そんな制度なのです。



さて、3回に分けて説明してきた今回のテーマも、
これで一応の一区切り、締めとさせていただきます。


これはかなり重要性の高い話でもありますので、
今後も機会をみつけて
こうして採り上げることもあるでしょう。


その際には、また、お付き合いいただければ幸いです。