JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

事業承継税制の概要とH23年度改正(その1)

 >(その2)を読む


吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


会社勤めをしてきた団塊の世代
次々と退職を迎えていく時代であり、
同じ年代の中小企業経営者の社長さん達の頭にも、
「引退」の文字がよぎっているかもしれません。


とはいえ細々とでも仕事を続けねば
生活が成り立っていかないという方もおられるでしょうが、
いざ仕事から引退すると決めたとしたならば、
せっかくここまで経営してきた会社をどうするのか、
これは、大きな悩みどころです。


自分の引退に合わせて会社も解散するのか、
お子様など、後継者に経営を承継させていくのか。


後者の場合、代表者としての身分だけ、形式だけでしたら、
手続き上は株主総会等を開催して議事録を作成し、
代表者変更の登記をすれば、それで済む話です。


が、中小企業の多くは現社長が
その株の多くを保有していることが多いでしょう。


お子様を次期社長にして経営を引き継ぐのであれば、
この株式についても代替わりに合わせて
その所有を移転して行く必要があるでしょう。


ただし、これはただ単純に、
株主名簿を書き換えれば済むわけではありません。


後継者が現経営者から適正な対価を支払って
当該株式を買うという形を選択していない場合、
現経営者が存命の内に移転するのであれば贈与税が、
不幸があってから移転するのであれば相続税が、
それぞれ、移転される株式数に応じて課せられるのです。


その税率は、共に超過累進課税方式により決定され、
該当する株式の評価額が高ければ高いほど、
納めなければならない贈与税額・相続税額もまた、
高額なものになっていくシステムになっています。


では、株式の評価額とは、どのように算出されるのでしょう。


上場株式であれば、市場によって価格が決められており、
この金額は一般に公明正大で信頼性が高いので、
株式の評価においてもこれを計算に用います。


ですが、中小企業のほとんどがそうであろう非上場株式は
市場による価格の決定がなされないわけで、
時価を以って評価額とすることができません。


そのような場合については
相続税法贈与税についてもここで規定されます)の条文に、
その株価の計算方法が定められています。


ここでそれを詳しく説明しだすと長くなりますし、
話が細かくなりすぎますので今は割愛しますが、
正確なものと異なるものの、ざっくりとした理解として、
会社の資産総額から負債総額を差し引いた残額、
つまり純資産価額を発行済み株式総数で割ることで
株価を算出するのだと覚えておいてください。


中小企業の場合は特にそうですが、
経営を頑張って利益を出していればその分だけ、
一般に、会社の繰越利益剰余金が溜まっていくものです。


それはつまり、上記の方法で計算される株価が、
上がっていくということを意味します。


つまり、より良い財務状態で後継者に
会社を承継しようとすればするだけ株価が高くなり、
相続税贈与税の税額も高くなってしまうというのです。


それだけの税金をきちんと納付できる現預金等があれば
全く問題は無いのでしょうけれども、
現実のコトはそう上手くは運ばないものでしょうし、
それが原因で後継者が株を相続できなければ、
いかに本人がやる気に燃え会社を大きくしようと思っても、
大事な方針を決めようとするたびに他の株主に反対されて
思うように経営をすることができず、
場合によっては解任動議を諮られて、
代表者の座を追われてしまうことになるかもしれません。


それを避ける為に借入をしてまで税金を納付し
前社長の保有していた株式を全て移転するのは、
後継者個人に余計な借金を背負わすことになります。


であればいっそ、事業承継などやらないことにして
会社は潰してしまおうということになると、
それは国にしてみれば税収減になりますし、
従業員の雇用も失われてしまうという
嬉しからざる事態になってしまいます。


そこで、後継者に対する円滑な事業承継を
促進する為に誕生した法律が、
非上場株式等に係る相続税贈与税の納税猶予制度、
いわゆる「事業承継税制」です。



前置き部分になる流れを書いていたら
随分と長くなってしまいましたので
今回はこの辺で切り上げますが、
なるべく早めに公開するつもりの(その2)では、
この「事業承継税制」の内容を
簡単にざっと説明したいと思います。