JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

特別受益と特別寄与

JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


今回は相続における遺産承継の
財産の相続分を考える際の
ちょっと特殊な事例となるものを2つ、
簡単に説明したいと思います。


まず最初は、「特別受益」。


特別受益とは、相続が発生した場合において
被相続人の生前に特に利益を受けていた
相続人がいるケースで、利益を受けた相続人と
利益を受けていない相続人とが公平になるよう
相続財産の配分を調整する制度をいいます。


2015年5月に「相続税の税額計算」と題した
エントリーで説明させていただいたように、
相続人の相続分は、一旦、相続により取得する
財産の価額を合計し、それを分割して求めます。


この計算において、被相続人の生前において
特定の相続人が被相続人から多額の贈与を
受けていることが分かったとしたならば、
その特別な贈与により取得した財産の価額は
相続税課税標準の合計額に加算されます。


この、特別な贈与で財産を取得していたことを
相続税法では「特別受益」と呼んでいます。


もともと、相続発生前3年間に発生した贈与は
その贈与財産を相続財産に加算することは
以前のエントリーで説明させていただきました。


特別受益はこの規定とは別枠のものであり、
加算される期間は想像開始前3年間と限らず
5年前、10年前の贈与であったとしても
それが特定受益と認められた場合には
相続財産に加算して総額の計算を行います。


つまり、その分の相続分を相続開始よりも前に
既に受け取っていたという扱いになるわけです。


具体的な計算例を挙げてみます。


相続人が配偶者と長男、次男の3人であり、
相続財産が4,000万円、長男は以前に
事業用資産として1,000万円を贈与された、
というようなケースを想定してみます。


この場合、長男が受け取った1,000万円が
特定受益とされなければ具体的な相続分は
配偶者...4,000×1/2=2,000万円
長男・次男...4,000×1/4=1,000万円

ということになりますが、特定受益とされれば
配偶者...(4,000+1,000)×1/2=2,500万円
長男...(4,000+1,000)×1/4 - 1,000=250万円
次男...(4,000+1,000)×1/4=1,250万円

という計算が行われることになります。


それぞれの金額が大きく変わったことが
お分かりいただけるでしょうか。


特別受益に該当するかしないかというのは
争いのもとにもなる事項だといえますから、
その判定は素人判断で行うのではなく
必ず専門家に相談するようにお願いします。


特別受益」に続くもう1つが「特別寄与」。


これは、共同相続人の中に、被相続人
財産を維持・増加させることに対して
特別の貢献をしたと認められる者がいれば、
相続財産の総額からその相当額を控除して
具体的な相続分の計算を行うことになります。


例えば相続人が長男と息子の2人であり、
相続財産が1,000万円だというケースで
長男に特別寄与が500万円あるとします。


この場合の相続分は、兄弟それぞれに
1,000万円の半分の500万円というのではなく、
長男...(1,000−500)×1/2+500=750万円
次男...(1,000−500)×1/2=250万円

という計算式が用いられることになるのです。


以上、財産相続分の2つの特殊な計算に
関する簡単な説明をさせていただきました。


特別受益も特別寄与も、ここでご説明したように
規定としては存在しているものなのですけれど、
実際に適用させるには少しハードルが高くて
争いごとになりかねないものであることは、
最後にご承知おきいただきたいと思います。