JR中央線 三鷹 (武蔵野市、吉祥寺) 所属税理士の日記

JR中央線、三鷹にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める所属税理士です。 税法や会計など、特に重要な話を抜粋したミラーブログです。

消費税の仕組み(その8)

(その7)を読む< >(その9)を読む


国税庁ホームページ吉祥寺(武蔵野市三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。


「消費税の仕組み(その6)」

そして「同 (その7)」と、

課税商品である「事務イス」と

非課税である「車イス」の2つを

製造販売しているケースを題材に、

消費税の仕入れ税額控除について、

基本的な計算方法などを説明してきました。


今回は、一定の要件を満たせば摘要される

「全額控除」について書いて、

消費税の「本則課税方式」における

仕入税額控除についての説明の

最終回とさせていただきたいと思います。



まず、前述の「一定の要件」ですが、

具体的には以下の2点です。


1)課税売上割合が95%以上であること


2)課税売上高(税抜)が5億円以下であること


この内、後者は平成23年の改正で追加された項目で、

平成24年4月1日以降開始の事業年度から適用されます。


つまり、同年3月31日までに開始する事業年度については、

今回紹介する「全額控除」を適用する為の要件は

「課税売上割合95%以上」の1点のみですので、

その点は、お間違えの無いようにお願いいたします。


で、この要件を満たしたならば適用できる「全額控除」とは、

その名前で既におおよそ察せられている人も多いでしょうが、

その課税仕入に対応している課税売上が

「個別対応方式」で区分される3種類のいずれかを問わず、

そしてまた、「一括比例配分方式」のように

課税売上割合を乗じるという計算をすることもなく、

その課税期間に支払った全ての課税仕入れに係る消費税を、

同期間の売上に係る消費税から控除するという方法です。


下の、(図14)をご覧ください。


   (図14)


「事務イス」と「車イス」の売上比が

ちょっとありえないような数字になっていますが、

課税売上割合を大きくする必要があるという、

説明の都合上のことですので、ご容赦ください。


「個別対応方式」と「一括比例配分方式」、

いずれのパターンにおいても控除できなくなる

仕入税額が発生しますけれど、

上記の要件を満たしていればこのように、

支出した消費税を全額控除できます。


これは、課税売上割合が95%以上であれば、

それは「課税売上しか行っていない」のと

ほぼ同じであると判断できることから、

他応する売上の種類によって

課税仕入れを3つに区分するという

事業者の事務処理の手間を軽減する目的で

設けられた規定になります。


ですが、一定以上の規模の事業者であれば

その程度の手間は負担にならないだろうから、

「全額控除」という納税者有利な規定を

選択できるようにしなくてもいいだろう、

というのが、平成23年改正の趣旨。


これによって毎年の税負担額が

増えることが見込まれる事業者にとっては

酷な改正ではありますけれども、

消費税というものの理屈に則って考える限り、

無茶なことを言われているわけではなくて、

むしろ本来そうである基準を

今までよりも少し厳格に摘要するようになる、

ということなのだと言えるでしょう。


宜しければ(図14)のモデルで、

「個別対応方式」と「一括比例半分方式」を

是非一度、ためしに計算してみてください。


「全額控除」がいかに納税者有利なものか、

改めて納得していただけると思います。



以上、消費税法における

原則的な仕入税額控除の方法の説明は、

これで終わりです。


ここまで書いてきた3つの計算方法を

1つの表にまとめたものを作りましたので、

最後にそれを掲載します。


   (図15)


(図15)表題及び最下部にも書いたように、

ここまで説明した原則的な「本則課税」に対して、

消費税の仕入れ税額控除にはもう1つ、

簡易課税」と呼ばれる方法があります。


せっかくですので今回の機会に

それについての説明もしようと考えているのですが、

ここでそこまでやるとさすがに長くなりすぎなので、

続きは次の「消費税の仕組み(その9)」でということで、

今回のエントリは、ひとまずこれにて。